母乳保育中のビリングズ法

授乳期間について

ビリングズ排卵法は母乳保育中も利用可能です。

母乳保育中にこの方法をどのように用いればよいかを理解するためには、最初にビリングズ排卵法教本 の、特に「記録をつける」および「遅い時期の排卵−排卵前期の延長および基本的不妊パターン」のセクションを読むことが必要です。

母乳保育とビリングズ排卵法は本来共存できるものです。

母乳のみで十分上手に保育している女性でも、出産後数週間で受胎可能になることがあります。それ以外の女性では、不妊期が数ヶ月〜数年続きます。ビリングズ排卵法を用いると、授乳中の女性は不妊日および受胎可能日を1日ごとに知ることができます。そうすることによってカップルは避妊用具や薬を用いずに、受胎を心配することなく性的関係を楽しむことができます。

カップルは、避妊薬中のホルモンが母乳および赤ちゃんに及ぼす可能性のある、有害作用について考えなければなりません。時間をおいて妊娠することによって、ひとりひとりの子どもに健康、成長および発達のための最良の機会を与えることができます。

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母乳保育にとって重要な考慮事項

  • 赤ちゃんの要求に合わせた授乳を強くお奨めします。またこの授乳法は受胎を抑制するために大いに役立ちます。

  • 完全母乳保育では生後6ヶ月まで、赤ちゃんの栄養を最適なものとするために、水分やその他の食物を補給する必要はありません。

  • 最初の数回の授乳では初乳が分泌され、感染を防御するために極めて大切な抗体源が赤ちゃんに供給されます。

出産または流産後の不妊期および受胎可能期

出産後に母乳保育を行っていない女性および流産した女性は約6週間以内に不妊期から受胎可能期に移行すると考えられます。女性は受胎可能期に戻ったことを示す身体の変化に注意しなければなりません。

月経の前に排卵が起こります。したがって、出血がないから不妊であると考えてはいけません。

膣口を毎日観察し、毎日記録します

女性がどちらのカテゴリーに入っているかにかかわらず、受胎調節を成功に導く鍵は基本的不妊パターンを覚えること、そしてビリングズ排卵法のガイドラインと規則に従うことです。そのための最初のステップは、毎日注意深く記録をつけることです。

女性は自分なりの表現で感じ、目にしたことを記録します。

基本的不妊パターン(例1、2,3を参照)

基本的不妊パターン(BIP)は排卵前でエストロゲンレベルが低いことに起因する、変化しない反応のパターンです。

  1.  粘液なし(膣口は乾いている); or

  2.  膣口の変化しないおりもの。この時エストロゲンレベルは低いまま一定か;または

  3.  2週間の観察中におりものが変化しないままであり、乾いた日によって中断される場合は、1および2の組み合わせ。

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ビリングズ排卵法のガイドライン

  • 膣口で観察されるおりものと同時に膣口の感触を毎日記録し続けてください。この観察は普段の生活の中で、直立姿勢で行います。

  • 間違った情報を与え、感染の原因ともなるので、膣の中を調べてはいけません。

  • 記録付けは出産後約3週間の、悪露(失血)が止まりかけた時点で開始します。

  • 最初、記録を付けている間は、約2週間にわたって性接触を避けます。そうすることで正確な観察が可能となります。次いで観察結果を正確に読みとることができます。

  • 不妊期/受胎可能期の正確な読みとり方を覚えてください。いずれかの状態を予測してはいけません。ビリングズ排卵法の公認教師による個人指導は非常に貴重です。私たちにご連絡いただければ、最寄りの教師の連絡先をお知らせいたします。

母乳保育中のビリングズ排卵法の規則

排卵前期規則(例4、5,6を参照)

  • 卵巣が静止している、時に数週間〜数ヶ月に及ぶ基本的不妊パターンの期間中は、排卵前期規則を適用してください。

  • 基本的不妊パターンは変化しないパターンです。基本的不妊パターンの間は1日おきの晩に性交することができます。性交後1日待つことによって、性交による分泌液および精液の流出が止まります。

  • 膣口の感触またはおりものに、出血や点状出血も含めた基本的不妊パターンからの変化が起こった場合には、この変化が終わり、基本的不妊パターンが3日間戻るまで待つのが規則です。基本的不妊パターンが戻ってから4日目の晩に、カップルは性交を再開することができます。私たちはこれを「3日間、待って様子を見よ」と呼んでいます。

ピーク規則を適用する時

  • 排卵が戻れば、すなわちピークが確認されれば、ピーク規則を適用します

  • ピーク日が確認された後のみに、ピーク規則を適用してください。ピーク日が確認されるまでは、基本的不妊パターンに排卵前期規則のみを適用してください。受胎可能期はピークに至る変化するパターンであり、これにはピーク後の3日間も含まれます。

ピーク規則(例7を参照)

  • ピーク後4日目以降、周期の最終日までは、毎日いつでも性交を行うことができます。

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出血

先に排卵が起こっていないにもかかわらず、数回の出血を見ることがあります。これはエストロゲンレベルの変動を示すものです。エストロゲンのレベルが上昇すると、卵胞期の胞状腺および血管の発達という形で子宮内膜が反応します。その結果、次のいずれかの理由で出血が起こることがあります:

  1.  エストロゲン高値に起因する破綻性出血:この出血は再発することがあります:破綻性出血は排卵直前に起こることがあり、受胎の可能性が高いことを示唆します;

  2.  エストロゲンのレベル上昇の数日後、エストロゲンレベルが低下し、子宮内膜からの支持が消失します(消退性出血)。

出血前に排卵(ピークによって確認)が起こらなかった場合には、その出血を月経として分類することはできません。

不妊から受胎可能な状態への変化

子宮頸管がひとたびエストロゲンレベルの上昇に反応すれば、子宮頸管で粘液が産生され、精子細胞が入れるようになります。女性の不妊状態に起こる変化の最初の徴候は間欠的な粘液分泌であることがあり、基本的不妊パターンの確認の妨げになる可能性があります。女性はこのような変化しつつある状況に気づくでしょう。この変化は数週間続くことがあります。このような現象は、確認可能なピークと排卵を伴った受胎可能期がまもなく戻ってくる前兆です。

排卵直前

膣口の非常にスベスベした滑らかな感触は重要な徴候です。女性はこの時期に、ピークを示す膣口の柔らかい膨満感に気づくことがあります。月経は2週間以内に起こります。ピーク後11日経たないうちに月経が始まった場合には、その女性が受胎することはありません。ピークから月経までの間が11日〜16日であれば、その後は受胎可能の徴候が再び出現します。

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周期の回復、規則および基本的不妊パターンの再評価

ひとたび周期が回復すれば、おりものの基本的不妊パターンを再評価する必要があります。基本的不妊パターンは排卵前の母乳保育中に経験したものとは異なるのが普通です。

メモ:出血の前に排卵が起こらなければ、その出血は月経として分類することはできません。「3日間、待って様子を見よ」規則を適用します。

ピーク日を決定することができた女性は、ピーク規則を適用します。月経は必ず排卵後に起こります。月経出血が多い間は性交は控えてください。

粘液記録の例

以下の粘液記録の例では国際チャートシンボルを用います。

粘液記録の例

以下の粘液記録の例では国際チャートシンボルを用います。

(1)乾いた基本的不妊パターン(BIP)

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おそらくは受胎可能

 

 

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感触/粘液の有無

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(2)膣口の変化しないおりもののBIP。女性は感じたことおよび見たことを2週間にわたって説明します。

女性は膣口の感触と目に見えるおりものを2週間にわたって毎日記録します。BIPはその女性が観察し、同じ言葉で表現したその女性自身の変化しないパターンです。女性はひとりひとりちがうので、各自の粘液パターンを自分なりの言葉で表現します。他の女性の経験や分離した標本の写真を基におりものを評価してはいけません。ある女性は観察結果を毎日「ネバネバで黄色」と記録するかも知れません。別の女性は観察結果を毎日「湿っていて何も見えない」と表現するか知れません。各女性が同じ徴候に対して同じ表現を用いるようにします。変化しないおりもののBIPを記録するためのシンボルは「=」です。

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おそらくは受胎可能

 

 

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感触/粘液の有無

ネバネバ 黄色

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ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

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ネバネバ 黄色

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ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

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感触/粘液の有無

ネバネバ 何も見えない

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ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

ネバネバ 何も見えない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)2週間の観察中におりものが変化しないままであり、乾いた日によって中断される場合は、(1)および(2)の組み合わせ

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おそらくは受胎可能

 

 

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感触/粘液の有無

ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

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ネバネバ 黄色

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ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

ネバネバ 黄色

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(4)乾いた基本的不妊パターン(BIP)−排卵前期規則を適用

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感触/粘液の有無

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濡れた; SF

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おりものまたは感触の変化

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SF = 精液


(5)膣口のおりものに変化がないBIP。女性は感じ、また見たことを説明します。すでに確認されたBIPに対して排卵前期規則を適用します。

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感触/粘液の有無

確認された変化しないおりもののBIP

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濡れた; SF

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おりものまたは感触の変化

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濡れた; SF

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血液のしみ

血液のしみ

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(6)2週間の観察中におりものが変化しないままであり、乾いた日によって中断される場合は、(1)および(2)の組み合わせ - established BIP, applying the Early Day Rules.

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感触/粘液の有無

確認された変化しないおりもののBIP and dry days

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おりものまたは感触の変化

異なるおりものまたは感触および点状出血

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例7−乾いた基本的不妊パターンの利用

記録は排卵前期に開始します。「3日間、待って様子を見よ」規則を5回適用していることに注意してください。42日目に「待って様子を見よ」規則を適用し、46日目にピークが確認され、ピーク規則を適用しました。

(7)乾いたBIP−「3日間、待って様子を見よ」−排卵前期規則およびピーク規則

 

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スベスベ 糸状 血液のしみ

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ネバネバ 不透明

ネバネバ 不透明

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濡れた; 出血