ビリングズ法を理解しよう

はじめに

図1は女性の生殖器官の解剖図です。

女性は排卵が近づいてくると、立った姿勢のときや、体を動かしているとき、膣から子宮頸管粘液が出てきます。この粘液は次のようにして膣口で観察できます。

  1. 一日を通しての膣口の感触の変化によって。

  2. 時々、粘液を直接観察することによって。

観察記録は毎日、就寝前につけます。

受胎可能期のパターンは変化するパターンであり、不妊期のパターンは変化しないパターンです。

これらのどちらのパターンも精子の生存と受胎を制御するホルモンのパターンを反映しているので、妊娠するため、あるいは妊娠を延期するために信頼できる情報を提供してくれます。

Reproductive Organs

図1. 女性の生殖器官

記録のつけ方

膣口で観察したことを毎日記録することは重要なことです。 一日の観察の中で気づいたもっとも受胎可能な特徴をその日の晩に記録します。 T観察を紛らわしくするので、膣内部を調べてはいけません。 今から始める最初の記録は、通常、2〜4週間継続します。その間、性交や性接触で生じる分泌物が観察を狂わせることがないように、性器同士の接触は一切避けてください。 観察を記述するためにキーワードを入力してください。膣口の感触や粘液の性質について一語二語書き込んでください。

記録には色別のスタ棒グラフを使い(チャート、 視覚的な記録 )。

出血は赤で記録します。(図2)

(排卵が早期に起こると、多量の出血のため粘液が見えない)。

規則1:月経中の出血の多い日は性接触を避けます。

図2.月経。

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ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

ウェット

ネバネバ

ドライ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本的不妊パターン

月経後、精子が子宮頸管の通路に入るのを阻止するため、さらに感染から守るために、子宮頸管はネバネバした濃い粘液の栓でふさがれます。

子宮頸管からの流出物は何もないので、膣口は乾いた感じがします。そこは、何も感じないし。(図3)

図3. 乾いた状態の基-{的不妊パターン。濃-ァな粘液の厚い栓が?るので、精子は進入できない。

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ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

ウェット

ネバネバ

ドライ

ドライ

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ドライ

ドライ

ドライ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本的不妊形式とは変化しないパターンのことで、子宮頸管が活動しないために起こるものです。平均的長さの周期の場合、次のようなことによって、それを認識します。

  1. 変化しない乾いた状態(図3)、あるいは

  2. 見える少量の粘液があっても膣口は乾いた状態で、それが毎日続くこと。図4は、粘液の基本的不妊パターンを示しています。3つの周期(4a4b、4c)は、(i)感触、あるいは(ii)粘液の出現、あるいはその両方の変化の時点を正しく識別するための学習に役立ててください。

卵巣は、この段階のときには、静止状態にあります。

規則2:不妊状態だとわかっているときは、一日おきに、夜、性交できます。(基本的不妊パターン)

性交後、精液は24時間膣から流出することが可能で、その場合、膣口に湿った感じを与えます。この精液には生きた精子細胞はいません。

図4(a)?(c)粘液が る場合の基-{的不妊パターンは、各周期において、-・體? -・體?燗ッじ状態が続く。初めのうちは、(4a, 4b)、その後パターンに変化がない場合(4c)。粘液の栓のために、精子は子宮頸管に入れない。

 

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4(a)

ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

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ネバネバ

ドライ

ドライ

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粘液の説明

 

 

 

 

粘液微量

粘液微量

粘液微量

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4(b)

ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

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ネバネバ

ドライ

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ドライ

ドライ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

 

粘液微量

粘液微量

粘液微量

粘液微量

粘液微量

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4(c)

ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

ウェット

ネバネバ

ドライ

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粘液の説明

 

 

 

 

粘液微量

粘液微量

粘液微量

粘液微量

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変化

図5は、卵巣が活動し、エストロゲン(図中[_ _ _])をつくっていることを示しています。エストロゲンは子宮頸管を活性化するように刺激します。すると、流動性に富んだ粘液がつくられ、栓はなくなり、したがって、精子が子宮頸管に入ることが可能になります。膣口は、乾いた感じから、もう乾いていないという変化を経験します。この時点での粘液の性質は濃密で不透明かもしれません。この不透明でネバネバした粘液は不妊状態を意味しません。この粘液が膣口に到達したということは、粘液が子宮頸管から出て、精子に通路を開いたことを意味しているのです。

規則3:基本的不妊パターンを中断する粘液や出血がある日は、いつでも性接触を避けます。その後、基本的不妊パターンが3日間続くまで性交を待ちます。すなわち、性交を4日目の夕方に再開する。引き続き規則2に従う。

図5.乾いた状態から、もう乾いていない感じ。に膣口の感触が変化する時点は、-荘モナつくられるエストロゲン-ハの増加と関連している。このとき、精子は子宮頸管に入ることが可能で?る。

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ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

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ネバネバ

ドライ

ドライ

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ドライ

ドライ

ネバネバ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不透明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の基本的不妊パターン(図6)でも同様に、卵巣が活性化したことを示しています。変化する時点は、腟口の感触の変化で気づきます。これはもう精子が子宮頸管に入ることが可能なことを示しているのです(図6)。

図6.基-{的不妊パターンから湿った感じを-^え、不透-セに見える粘液への膣口の感触の変化の時点。この変化は-荘モナつくられるエストロゲン-ハの増加と関連している。精子はこのとき子宮頸管に入ることが可能で?る。

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ピーク

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

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ネバネバ

ドライ

ドライ

ドライ

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湿った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

粘液微量

粘液微量

粘液微量

粘液微量

不透明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変更のシーケンス

図7は受胎可能期の特徴である変化するパターンを示しています(基本的不妊パターンは変化しないパターンです。)卵巣はますます多量のエストロゲンをつくります。粘液はネバネバした性質から、次第に湿ったスベスベした感触へと変化していきます。透明な糸状の粘液に気づくこともあります。最大量だった粘液は減少するかもしれませんが、スベスベした感触はその後1日か2日続きます。スベスベした感触の最終日がその周期の中でもっとも妊娠する可能性の高い日で、この日のことをピークと定義します。妊娠の可能性がピークであり、膣口が敏感ではれぼったさを伴います。

図7. ピーク、すなわち、スベスベした感触の最後の日は、(×)印をつける。プロゲステロン産生。「ピーク後第1日目」については図8を参照。

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ピーク

 

X

 

おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

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不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

ウェット

ウェット

ウェット

ネバネバ

ドライ

ドライ

ドライ

ドライ

ドライ

ドライ

ネバネバ

ウェット

スベスベ

スベスベ

スベスベ

スベスベ

ネバネバ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不透明

 

 

透明 糸をひく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピークは(×)を書き込んで記録します。この時点は排卵が間近にせまっています。卵胞が卵子を卵管に放出するための準備をしているとき、卵巣はすでにプロゲステロンをつくっています。プロゲステロンは濃いネバネバした粘液をつくるように子宮頸管の下部を活性化し、その粘液は3日間にわたって子宮頸管の通路を徐々にふさぎます。しかし、この3日間は精子が通ることのできる狭い通路がまだ残っています。これらの精子は、卵子が受精するために待ち受けている卵管の膨大部に素早くたどり着けます。

今、卵子が卵管の中に見えます(図8)。黄体化卵胞(黄体)からのプロゲステロンの影響により、子宮頸管は濃い粘液でふさがれ始めます。プロゲステロンは粘液に影響を与えますから、膣口も感触の変化に気づき、乾いた感じからネバネバした感じがします。

図8。ピーク後第1日-レ。すでに排-曹ェ?り、そのときの膣口の感触は。このように、ピークは起こった後に認識される。

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ピーク

 

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おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

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不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

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ネバネバ

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ネバネバ

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スベスベ

スベスベ

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ドライ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粘液の説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不透明

 

 

透明 糸をひく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄体期

図9は月経周期における黄体期を示しています。それはピーク(膣口がスベスベする感じのする最終日)後、4日目から始まります。この期間は子宮頸管が濃密な粘液の栓でふさがれ、精子は子宮腔に入れません。卵巣内の黄体はエストロゲンとプロゲステロンの両方をつくります。粘液が変化した最初の時点から、ピーク後の4日目開始以前(つまり、ピーク後3日目終了まで)に性接触がなければ、卵子は受精しませんし、卵管内で崩壊します。

規則4: (ピーク規則 ). 粘液のピークの日の後4日目が始まるまで一切の性接触をさけなければなりません。その後、周期の終わりまでは、毎日でも、何時にでも性交できます。

図9. ピーク後4日-レまでに-綜qは破壊する。精子は子宮頸管に入ることができない。-曹ヘ消え、?性は不妊となる。

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ピーク

 

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おそらくは受胎可能

 

 

 

 

 

 

 

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不妊の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感触

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ネバネバ

ウェット

スベスベ

スベスベ

スベスベ

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ドライ

ネバネバ

ネバネバ

ネバネバ

ドライ

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湿った

ドライ

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ドライ

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粘液の説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不透明

 

 

透明 糸をひく

 

 

 

 

 

 

 

不透明

不透明

不透明

 

不透明

 

 

 

 

周期の最後に、たいてい排卵後11〜16日目に月経(図10)が起こり、それは、次の周期の始まりでもあります。子宮頸管の栓はなくなり、子宮から外部へ月経の通路ができます。卵巣は今や休止状態へと戻りました。

図10.ふつう、排-?1〜16日後にくる月経。

排卵の遅れ‐排卵前期の長期化と基本的不妊パターン

ストレスがたまったり、母乳哺育中や、閉経前には、しばしば排卵が遅れます。

基本的不妊パターンは変化しないパターンのことで、少なくとも2週間にわたって、次のどれかの徴候が観察されるときのことをいいます。

  1. 粘液がない(膣口が乾いている);あるいは、

  2. 一定した低いレベルのエストロゲンのため、膣口から変化しないおりものがある。あるいは、

  3. 2週間の観察中に、変化しないおりものが続いているが、その間に乾いた日がはさまるという(1)と(2)の組み合わせ。

ビリングズ排卵法の規則

  1. 妊娠したい時:
    排卵前期規則を適用します。これによって、粘液が受胎可能のパターンに変化したことを確認できます。そして、スベスベした粘液が出るまで性交を待ちます。その後の数日間が最も妊娠しやすい状況にあります。ですから、スベスベした粘液が明白である間とピーク後

  2. 妊娠を延期したい時:

    排卵前期規則

    規則1:月経中の出血の多い日は性接触を避けます。

    規則2:不妊状態だとわかっているときは、一日おきに、夜、性交できます。(基本的不妊パターン)

    規則3:基本的不妊パターンを中断する粘液や出血がある日は、いつでも性接触を避けます。その後、基本的不妊パターンが3日間続くまで性交を待ちます。すなわち、性交を4日目の夕方に再開する。引き続き規則2に従う。

    ピーク規則

    規則4: 粘液のピークの日の後4日目が始まるまで一切の性接触をさけなければなりません。その後、周期の終わりまでは、毎日でも、何時にでも性交できます。